問題が減ったのか、見えなくなったのか。互助会とPIO-NETをめぐる私の強い違和感
団塊世代が「互助会を使う時代」に、なぜ私たちは数字を追いにくくなったのか
私は葬儀社を経営しています。
ですから、この記事を書くことについては、少し迷いもありました。
冠婚葬祭互助会も同じ葬祭業界です。
もちろん、互助会という仕組みそのものを否定するつもりはありません。
長年、冠婚葬祭に備える仕組みとして利用されてきた歴史があります。経済産業大臣の許可を受ける事業であり、前受金についても保全措置が設けられています。業界団体である全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)も、約款の整備、コンプライアンス、苦情対策などを続けています。
それでも私は、同じ葬祭業界にいる人間だからこそ、消費者にとって分かりにくいこと、あるいは都合の悪い数字が見えにくくなることを、黙って見過ごしてはいけないと思っています。
今回、私が強い違和感を持ったのは、
「冠婚葬祭互助会をめぐる消費者トラブルは、本当に減っているのだろうか」
という、ごく単純な疑問からでした。
調べ始めると、数字はある。
過去の訴訟もある。
行政資料もある。
相談事例もある。
ところが、ある時期から、肝心の「冠婚葬祭互助会」という分類の全国相談件数を、一般の消費者が年度ごとに簡単に追うことが難しくなっています。
そして2026年9月11日、一般の利用者がPIO-NETの相談情報を条件指定して検索・集計できた「消費生活相談データベース」は運用を終了しました。
私は、これを単なるシステム変更として片付けていいのだろうかと思っています。
まず、過去の互助会トラブル件数を見てみる
経済産業省の資料には、PIO-NETに登録された
「冠婚葬祭互助会」の苦情・相談件数が掲載されています。
2004年度 2,702件
2005年度 2,740件
2006年度 3,030件
2007年度 3,160件
2008年度 3,295件
2009年度 3,449件
2010年度 3,440件
2011年度 3,768件
2012年度 3,477件
です。
別の経済産業省資料では、集計時点の違いから若干数字は異なりますが、
2006年度 3,010件
2007年度 3,132件
2008年度 3,284件
2009年度 3,434件
2010年度 3,419件
2011年度 3,735件
2012年度 3,463件
2013年度 3,622件
2014年度 3,559件
2015年度 3,770件
となっています。
経済産業省自身が2017年2月時点で、
「近年は3,500件前後と高止まりで推移しており、減少していない」
と評価していました。
さらに2015年度の3,770件のうち、内容キーワードに「解約」「解約料」「解約拒否」のいずれかが含まれる相談は2,868件。
実に約76%です。
当時の互助会トラブルの中心が、圧倒的に「解約」だったことが分かります。
ところが2016年度、相談件数が突然3割以上減った
2016年度の国民生活センター資料を見ると、
2015年度 3,770件
2016年度 2,536件
となっています。
前年差は、
▲1,234件。
約32.7%の減少です。
国民生活センターの「2016年度のPIO-NETにみる消費生活相談の概要」では、「冠婚葬祭互助会」は減少件数9位として掲載されています。
正直に言えば、最初にこの数字を見た時、私は違和感を覚えました。
3,500~3,700件前後で推移していたものが、1年で2,500件台になる。
そんなに突然、互助会の問題が解決したのだろうか。
調べていくと、2015年度の数字そのものにも、少し特殊な事情があったことが分かってきました。
2015年度、千葉県だけで相談が
477件増えている
2015年度、千葉県では「冠婚葬祭互助会」の相談が、
2014年度 112件
2015年度 589件
へ急増しています。
わずか1年で、
+477件。
千葉県資料では、県内の冠婚葬祭互助会への問い合わせが集中し、電話がつながらない等の相談が多数寄せられた旨が説明されています。
全国では、
2014年度 3,559件
2015年度 3,770件
ですから、全国の増加は+211件しかありません。
ここで千葉県を除いて計算すると、
2014年度
3,559-112=3,447件
2015年度
3,770-589=3,181件
となります。
つまり千葉県を除く全国では、
▲266件。
この数字を見ると、2015年度の3,770件を「全国で一様にトラブルが増えた数字」と見るのは適切ではないでしょう。
少なくとも2015年度は、一部地域の大量相談によって全国値が押し上げられていた可
能性があります。
なぜこの時期、互助会の「解約」が大きな社会問題になったのか
ここで時間を少し戻します。
2013年1月。
セレマをめぐる訴訟で大阪高裁判決が出ました。
2013年12月。
経済産業省は「冠婚葬祭互助会の解約手数料のあり方等に係る研究会報告書」をまとめました。
2015年1月。
セレマ事件について最高裁が上告を受理せず、大阪高裁判決が確定。
2015年11月。
今度は日本セレモニー事件で福岡高裁判決。
2016年10月。
こちらも最高裁が上告を受理せず、福岡高裁判決が確定しました。
つまり2013~2016年は、互助会の解約手数料をめぐって、裁判・行政・消費者団体・マスコミが大きく動いた時期です。
私は、2015年の相談増加には「報道を見た既存会員の問い合わせ」もあったのではないかと思う
ここからは私の推論です。
裁判のニュースを見た互助会加入者が、
「自分の契約は大丈夫なのか」
「今解約したら、いくら引かれるのか」
「新聞で高い解約手数料が問題になっているが、自分も同じなのか」
と不安になり、互助会会社や消費生活センターへ問い合わせた。
そうした「駆け込み問い合わせ」のような現象が一部地域で発生したのではないか。
千葉県の112件から589件という急増は、この仮説と非常によく整合します。
ただし、ここは明確にしておきます。
千葉県が「訴訟報道が原因だった」と公式に認定しているわけではありません。
あくまで時系列と相談増加の状況から見た、私自身の仮説です。
業界は実際に解約手数料を大幅に引き下げた
一方で、互助会業界が何もしなかったわけではありません。
むしろ、ここは公平に評価すべきだと思います。
経済産業省の2017年資料では、研究会報告等を受けて業界が解約手数料の引き下げを実施したことが示されています。
全互協が約款監修を行った163社・733コースでは、満期後の平均解約手数料が、
約款改訂前
43,700円
契約額比14.6%
から、
約款改訂後
20,329円
7.1%
まで下がっています。
ほぼ半分です。
30万円程度のコースでも、4万円台から2万円台へ下げた例が確認されています。
これは間違いなく、消費者保護の方向への改善です。
ただ、私は「社会問題を沈静化する意味もあったのではないか」と考えている
これも私の推論です。
裁判が続く。
マスコミに取り上げられる。
消費生活相談が多い。
経済産業省が研究会を開く。
その中で業界として、
「従来の解約手数料のままでは持たない」
という判断があったとしても、不思議ではありません。
もちろん、「火消しのために下げた」という内部資料を私は持っていません。
ですからそう断定はしません。
ただ、
消費者保護だけでなく、社会問題化した解約手数料問題を収拾する、事態収拾的な意味もあったのではないか。
私はそう考えています。
「一度下げて、あとから元に戻した」のか?
ここも調べました。
結論から言うと、
業界全体が一度7%程度まで下げ、その後14~15%に戻した、と証明できるデータは確認できませんでした。
むしろ同じ会社・同じコースで追うと、そう単純ではありません。
日本セレモニーのGコースは、訴訟当時(2012年)、
契約額24万円
完納時解約控除額39,600円
控除率16.5%
でした。
現在公開されている2022年適用約款でも、
契約額24万円
解約払戻金200,400円
です。
つまり、
240,000円-200,400円=39,600円。
やはり16.5%です。
2012年と2022年で、39,600円・16.5%という同額でした。
少なくともこのコースについては、
「いったん下げて、その後元へ戻した」
という事実は確認できません。
一方、2016年に確定した日本セレモニー事件では、募集費や会員管理費、前受金保全費等についても、一定範囲で平均的損害へ含め得るという、セレマ事件より互助会側に有利な法的整理もなされています。
つまり、2013年前後に業界一律で単純な「値下げ」が行われ、その後一律で「値戻し」が行われた、という単純な話ではなさそうです。
サンセルモとユウベルを見ても、各社の姿勢は違う
例えばサンセルモは現在、公式サイトで解約手数料について、積立残高により異なるものの「約1万円~2万円台」と具体的な目安を示しています。
こういう情報開示は、私は評価してよいと思います。
一方、ユウベルの公式FAQでは、解約自体は可能で、支払済金額から「所定の手数料」を差し引いて返金するとしていますが、一般公開Web上では具体的な手数料表を確認できませんでした。
もちろん、
「公開していない=高い」
ではありません。
そこは分けて考えなければなりません。
ただ消費者の立場から言えば、
「自分が解約したら、いくら戻るのか」
を契約前から簡単に確認できる会社の方が、透明性は高いでしょう。
そして、ここからが私が一番気になっている問題です
互助会の問題を過去の「解約手数料問題」だけで考えてはいけないのではないか。
私はそう思って
います。
なぜなら今、日本は人口構造そのものが大きく変わっているからです。
団塊世代が「互助会に入る時代」から「互助会を使う時代」に入った
第一次ベビーブーム、いわゆる団塊世代は1947~1949年生まれです。
2026年現在では、おおむね77~79歳。
非常に人口の多い世代です。
そして、現在の互助会加入者は明らかに高齢者側へ偏っています。
2025年9月に全互協が実施した加入者4,800人調査では、
59歳以下 21.8%
60代 29.6%
70代 26.5%
80代 18.8%
90歳以上 3.3%
でした。
60歳以上を合計すると、
78.2%。
70歳以上だけでも、
48.6%。
ほぼ半数です。
一般消費者調査でも、若い世代と高齢世代では加入率に大きな差がある
これは一次行政統計ではありませんが、業界関連機関が公表した2022年調査では、
40代 9.8%
50代 17.2%
60代 27.2%
70代 27.2%
80代 36.2%
が「互助会に加入している」と回答しています。
40代と80代では3倍以上の差があります。
私は葬儀業界にいて、これは実感としてもよく分かります。
今の40代や50代には、
「葬式代を毎月何十年も積み立てる」
という価値観を持たない人がかなり増えています。
必要になった時に比較する。
ネットで調べる。
家族葬会社を選ぶ。
直葬も検討する。
昔とは、葬儀の選び方そのものが変わりました。
それでも、約2,000万口もの互助会契約が存在している
全互協資料では、互助会加入契約数は、
2013年3月 2,396万口
2018年3月 2,310万口
2020年3月 2,266万口
2022年3月 2,207万口
2024年3月 2,128万口
と減少しています。
さらに業界関連会社の2026年3月推計では約2,060万件です。
新しい契約が爆発的に増えている市場ではありません。
しかし、2,000万口を超える既存契約が残っています。
しかも全互協加盟社だけで、年間40万件を超える葬儀が施行されています。
ここで私は、非常に重要な「時間差」があると思っています。
互助会には「世代間時差」がある
親が50代、60代の頃に加入する。
10年、20年、場合によっては30年積み立てる。
そして親が亡くなる。
その時、実際に葬儀社と打ち合わせするのは誰でしょうか。
多くの場合、子供です。
契約した人と、
葬儀を決める人と、
追加料金を払う人が、
別人になるのです。
私はこれを、
「互助会の世代間時差問題」
と考えています。
親は「これで葬式は安心」と思っていた
昔、親はこう説明されたかもしれません。
「今から積み立てておけば安心ですよ」
「会員価格で安くなりますよ」
「万が一の時に困りませんよ」
親からすれば、
30万円、40万円、50万円と積み立てている。
だから自然に、
「これだけ積み立てておけば、葬式はだいたいできる」
という感覚を持つ人もいるでしょう。
しかし、実際に喪主となる子供には違う景色が見える
親が亡くなった。
子供が喪主になる。
互助会へ連絡する。
すると、
「これは契約に含まれていません」
「この花は追加です」
「料理は別です」
「返礼品は別です」
「人数が増えると追加です」
「このグレードなら追加料金です」
となる。
子供からすれば、
「何十年も積み立ててきたのに、まだ払うのか」
となります。
実際に、積立額を大きく超える相談事例が公表されている
自治体が紹介している相談には、
互助会に48万円を積み立てていたため、48万円程度で葬儀ができると思っていたところ、葬儀後に100万円を超える請求となった、
という趣旨の事例があります。
これは互助会制度の違法性を意味する話ではありません。
重要なのは、
消費者の「積み立て」という言葉から受ける感覚と、実際の契約の仕組みが一致していない場合がある
ということです。
互助会は、銀行預金のように「葬式代を貯金している」制度ではありません。
契約で定められた役務を前払いで購入している制度です。
この違いを、加入者本人だけでなく、その子供まで理解しているでしょうか。
しかも子供世代は、親世代より情報を調べる
私はここも重要だと思っています。
親世代なら、
「昔からこの会社に入っているから」
「こんなものなのだろう」
と受け入れていたかもしれない。
しかし今の子供世代は違います。
スマートフォンで調べる。
他社の葬儀価格を見る。
口コミを見る。
見積書を比較する。
約款を読む。
納得できなければ消費生活センターに相談する。
つまり、同じ契約でも、世代が変わることで「トラブルとして認識される確率」が変わる可能性があります。
全互協自身も「親から子への伝達」を課題として認識している
業界側も、この問題を無視しているわけではありません。

全互協はコンプライアンス活動を継続しており、2024年の会議ではPIO-NETの2022年度相談件数を扱い、2024~2025年度の活動でも「解約」「高齢者への勧誘」「見積の不提示」などをテーマにしています。
これは逆に言えば、
こうした問題が今も業界のコンプライアンス上の論点である
ということでもあります。
では、互助会トラブルは最近、本当に増えているのか?
ここで私は、非常に大事なことを正直に書きます。
分かりません。
正確には、
「全国のPIO-NETに登録された『冠婚葬祭互助会』の2020年代の総相談件数を、一般公開情報から連続して確認できないため、増えているとも減っているとも断定できない」
のです。
ただしデータそのものが消えたわけではありません。
経済産業省の2024年の事後評価資料には、PIO-NETを出所として2017~2022年度の「冠婚葬祭互助会に関する苦情・相談件数の推移」がグラフで掲載され、経産省はこの期間について減少していると評価しています。
また全互協は2024年2月の会議で「PIO-NET 冠婚葬祭互助会事業における2022年度相談件数」を扱っています。
さらに2024年秋の会議では、2023年度のPIO-NET相談件数を加盟社へ共有しています。
つまり、
数字は存在している。
問題は、一般消費者側から簡単に追えないことです。
2022年度、「解約料」に関する相談だけで428件
消費者庁の2023年資料を見ると、2022年度のPIO-NET相談のうち、「解約料」というキーワードが付いた商品・サービス別件数で、
冠婚葬祭互助会は428件。
20位中16位です。
これは「互助会に関する相談総数」ではありません。
あくまで「解約料」というキーワードに関連した相談だけです。
総数ではなく、解約料だけで428件。
2020年代になっても、解約問題が消えていないことだけは明らかです。
一方、「葬儀サービス」全体の相談は高い水準にある
ここで注意してほしいのは、
「冠婚葬祭互助会」
と
「葬儀サービス」
はPIO-NET上では別分類だということです。
この2つを混ぜてはいけません。
しかし、葬儀サービス全体の相談動向を見ることには意味があります。
国民生活センターの2026年6月公表資料では、
2019年度 632件
2020年度 686件
2021年度 800件
2022年度 951件
2023年度 886件
2024年度 978件
2025年度 917件
とされています。
ただしPIO-NETの数字は登録締切日によって更新されます。
国民生活センターが2026年7月31日に更新した最新ページでは、
2023年度 886件
2024年度 979件
2025年度 1,005件
となっています。
これは2026年5月31日現在の登録分です。
つまり、葬儀サービスに関する相談自体は決して少なくありません。
しかも国民生活センターは「高価格・料金」に関する相談割合が増加傾向にあると注意喚起しています。
私の仮説はこうです
ここまでの事実を並べると、私は次のことを考えます。
団塊世代という巨大な人口集団が70代後半になった。
互助会の加入者は60歳以上が約8割。
70歳以上だけで約半数。
約2,000万口の契約が残っている。
この契約が、これから「積み立てる契約」ではなく、「実際に使われる契約」になっていく。
契約したのは親。
しかし、葬儀を実際に決めるのは子。
その時、
「思っていたほど安くない」
「積み立てたのに追加料金が必要」
「解約するとこんなに引かれるのか」
「親はそんな説明を聞いていないと言っていた」
という問題が顕在化する。
私は、こうした「世代間時差」から生まれる相談は、これから非常に重要なテーマになると考えています。
それが実際に全国で増えているのか。
こここそPIO-NETで確認したいところです。
ところが、2026年9月11日、公開データベースが終了した
旧「消費生活相談データベース(PIO-NETより)」では、一般利用者でも、
商品・サービス
主な相談内容
販売手口
受付年度
契約当事者の年齢
性別
地域
などを条件指定して検索できました。
検索結果の件数を見る。
相談内容を見る。
年度別に集計する。
表にする。
グラフにする。
匿名化された相談内容を表示する。
そういうことができました。
たとえば、
「冠婚葬祭互助会」
×
「解約」
×
「70歳以上」
×
「2024年度」
といった方向から、消費者自身がデータを掘ることができる仕組みだったわけです。
しかも旧データベースは、過去5年度+現年度の6年度分を検索できる仕組みでした。
ところがこのサービスは、
2026年9月11日18時で終了しました。
理由として国民生活センターが示しているのは、
「システムの見直し等に伴い」
です。
2026年9月14日、新しく「消費者トラブル解決ナビ」が始まった
3日後、新しい「消費者トラブル解決ナビ」がスタートしました。
こちらは、
FAQで解決方法を調べる。
消費生活センターを探す。
Web相談へ進む。
といった「トラブル解決支援」が中心です。
これはこれで大切です。
困っている人を相談窓口へ案内することは必要です。
私は、その機能を否定するつもりはありません。
なお、現在もFAQ、ADR、注意喚起記事、代表事例、相談窓口などは閲覧できます。したがって、「相談事例が全部消えた」と書くのは正確ではありません。
しかし、私はどうしても納得できない
相談しやすくすることと、
データを見られることは別問題です。
困った時に「どこへ相談すればいいか」を教える。
それは消費者保護です。
しかし、
「社会で今、何が何件起きているのか」
「去年より増えたのか」
「70代の相談が多いのか」
「解約なのか、追加料金なのか」
を一般の消費者や研究者、報道機関、そして私たち事業者が自分で確認できること。
これもまた、消費者保護ではないでしょうか。
さらに2026年度からPIO-NETの分類も変更された
旧データベースにはもう一つ大きな変更があります。
2026年度から「商品・サービス」や「主な販売手口・商法」の分類が改訂されました。
一部の小分類は廃止されました。
国民生活センター自身が、
2021~2025年度と2026年度のデータは単純比較できない
と注意書きを出しています。
つまり、
公開検索DBの終了
+
分類体系の変更
が同じ2026年に重なっています。
長期的な消費者トラブルの推移を追いたい人間にとっては、かなり大きな変更です。
「隠ぺい」なのか
ここは言葉を慎重に使います。
私は、
政府が互助会トラブルを隠すために公開DBを終了した
とは言いません。
その証拠はありません。
それを事実のように書けば、私自身が不正確な情報を発信することになります。
しかし、
消費者側から見て、
「隠ぺいと受け止められても仕方がないのではないか」
という疑問は、私は持っています。
なぜなら、
一番知りたい時に、
一番自由に調べられる道具がなくなったからです。
なぜ、今なのか
団塊世代が70代後半に入っている。
互助会加入者の約8割が60歳以上。
契約口数はまだ2,000万口を超える。
年間40万件超の互助会葬儀が行われている。
葬儀サービス全体の相談件数は高水準。
「解約料」に関連する互助会相談も2022年度だけで428件。
親が契約し、子が施行する時代になっている。
本来なら、
今こそ詳しく数字を見たい時期ではないでしょうか。
私はそう思います。
問題が減ったのであれば、堂々と数字を見せればいい
もし互助会トラブルが本当に減っているのであれば、
それは非常に良いことです。
経済産業省も2017~2022年度について減少傾向を確認しています。
業界が解約手数料を見直した成果かもしれ
ない。
コンプライアンス強化の成果かもしれない。
説明方法が改善された成果かもしれない。
それなら、
堂々と数字を公開すればいい。
私はそう思います。
逆に、問題が増えているのであれば、なおさら公開するべきです
高齢化によって新しいタイプのトラブルが増えている。
契約した親と、支払う子の認識差が問題になっている。
追加料金に関する相談が増えている。
もしそうなら、
なおさら社会全体で共有する必要があります。
データは、業界を攻撃するためにあるのではありません。
改善するためにあるのです。
私は互助会制度そのものを否定したいわけではない
ここは、はっきり書いておきます。
互助会制度には長い歴史があります。
利用して良かったという方も大勢いるでしょう。
業界側も何十年も改善を重ねています。
解約手数料を実際に引き下げた歴史もある。
全互協も現在もコンプライアンス会議を行っています。
サンセルモのように、現在の解約手数料の目安を比較的分かりやすく公表している会社もあります。
ですから、
「互助会は悪だ」
という話をしたいのではありません。
私が言いたいのは「透明性」の話です
消費者が契約する前に、
何を積み立てているのか分かる。
解約すると、いくら戻るのか分かる。
葬儀で何が含まれ、何が別料金なのか分かる。
子供にも契約内容が伝わっている。
そして社会全体として、
どんな苦情が、
何件、
どんな年代に、
どんな理由で起きているのか、
誰でも確認できる。
私は、これが本当の消費者保護だと思っています。
葬儀社経営者として、あえて言いたい
私は葬儀社を経営しています。
だからこそ、
葬祭業界にとって都合の悪い数字であっても、
見える状態にしておくべきだと思っています。
私たち葬儀社も同じです。
料金トラブルが増えているなら、その数字を見るべきです。
説明不足の相談が多いなら、改善しなければならない。
家族葬の価格表示が誤解を招いているなら、直さなければならない。
データを見えなくしても、業界は良くなりません。
「相談できる社会」だけでなく、「確かめられる社会」であってほしい
2026年9月に始まった「消費者トラブル解決ナビ」は、相談する人にとって便利な仕組みになるでしょう。
そこは評価したい。
しかし私は、それだけでは足りないと思っています。
相談窓口の充実と、
データ公開の充実は、
どちらか一方を選ぶものではありません。
両方必要です。
最後に
互助会トラブルは、本当に減ったのでしょうか。
それとも、
私たちから見えにくくなっただけなのでしょうか。
団塊世代が、
互助会へ「加入する世代」から、
互助会を「実際に使う世代」へ移っています。
親が「これで安心」と積み立てた契約を、
子供が喪主となって初めて詳細に確認する。
その時、
「何十年も積み立てたのに、なぜこんなに追加費用が必要なのか」
という疑問が生まれることは、十分に考えられます。
その問題が本当に増えているのか。
減っているのか。
私は知りたい。
消費者にも知る権利があると思います。
問題が減ったのなら、
数字を見せればいい。
問題が増えているのなら、
なおさら数字を見せるべきです。
被害がないことと、
被害が見えないことは、
まったく別の話です。
消費者が、自分で確かめられる社会であること。
同じ葬祭業界に生きる一人の経営者として、
私はそれこそが、本当の消費者保護だと思っています。
主な参考資料・出典
- 経済産業省「冠婚葬祭互助会の解約手数料のあり方等に係る研究会報告書」(2013年12月)
- 経済産業省「前払式特定取引に係る現状と課題」(2017年2月、第17回産業構造審議会割賦販売小委員会 資料4)
- 国民生活センター「2016年度のPIO-NETにみる消費生活相談の概要」(2017年8月10日)
- 経済産業省「割賦販売法施行規則に係る事後評価書」(2024年)
- 消費者庁「解約料に関する現状等について」(2023年12月)
- 全日本冠婚葬祭互助協会 2023年度・2024年度事業報告書
- 全日本冠婚葬祭互助協会「互助会とは」加入契約数等
- 全日本冠婚葬祭互助協会「冠婚葬祭互助会の日」年間葬儀施行件数
- 全日本冠婚葬祭互助協会「互助会加入者ニーズアンケート調査」(2025年9月)
- 冠婚葬祭総合研究所等「年齢階層別の冠婚葬祭互助会への加入状況」
- 国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル」(2026年6月3日)
- 国民生活センター「墓・葬儀サービス 各種相談の件数や傾向」(2026年7月31日更新)
- 国民生活センター「消費生活相談データベース(PIO-NETより)」終了告知
- 国民生活センター「消費者トラブル解決ナビを開設しました」(2026年9月14日)
