お葬式に変わるネーミングが確定しました
「お葬式、世の中すべて家族葬」
少々勇気の必要な言葉ですが、しかし実際にはそう呼んだ方が理にかなっている理由をご説明させていただきたいと思います。
まず第一に一般の方々がお葬式の種類やジャンルに対して詳しい知識なんてあるはずもなく、我々葬儀社サイドが日頃よく広告で使っている専門用語を理解、区別できていない点を挙げます。
葬儀社側は一般葬と家族葬を比較したがりますが、しかし残念ながら一般の方々の会話の中で「一般葬」という言葉を日常的に使うこともなければ違いが何なのかを説明できる人もいない。一般葬という言葉自体が一般社会では死語に近いと言えてしまう点です。従来の一般葬儀社は、近年新たなジャンルの開拓者として誕生した家族葬専門店に対して懸命にその違いを説明してきた10年だったといえます。「家族葬だと(きちんとお世話になった方々には訃報通知をしておかないと)葬儀が終ってからが大変ですよ。」とみんな言いました。おそらく一般葬儀社は100%の確率でそのフレーズを発信してきたと思います。逆に、新興勢力として誕生した家族葬専門店の方々も一般葬儀社との違いを差別化の売り文句として
家族葬のほうが一般葬に比べて葬儀金額が安いですよとか、労力の節約にもなるし一番大変なはずの遺族が一番気苦労するのが一般葬ですよと言って来たと思います。互いが互いで正当化してきたといいますか。どっちもがそのコントラストを利用しあった節はあると思うわけです。しかしその流れもあたり前の原理で、その理念の闘争(付き合いはきちんとする派VS面倒なことはしない派)に決着がつく時が来ました。
第二として、安倍元総理のご葬儀(7月11日、12日)が家族葬で執り行われた点です。これは今後葬祭業界にかなりの影響を与えると思われます。「は?どういうこと?」と思われるかもしれませんが理由は簡単で親族からの通知には家族葬で執り行うとありましたよね。マスコミもそれを受けて近親者にて家族葬で行われる予定とのことですと報道をしました。
特筆すべきは数千人が参列した葬儀も家族葬であるという点です。葬儀業界のスタンダードが決定的に変わった瞬間でした。
どこが家族葬なんだよ!と突っ込むマスコミや評論家もおられませんでしたし、ワイドショーの中継では「本日の告別式では家族葬で営まれ・・・」という表現が使われていたことにも一般市民は何一つ違和感を覚えなかった、そういうことです。献花台が設置され、来場者への対応をし、数千人規模でも家族葬であるという証明になります。話は少々逸れますが、数年前に上皇陛下が天皇だった頃だったと思いますが、「大喪の礼」は国民に迷惑をかけないよう、身内でやるから、大がかりにしないでほしいという発表をしましたよね。あの頃から、国民も「そうそう!葬儀は大げさにしなくたっていいんだよ、天皇陛下でもそうおっしゃってるんだから!」という声を聞いたことがあります。
つまり天皇家も家族葬ということになります。当然、誰がお金を出すのか?合同葬だとしたらどれくらいの割合で出し合うのか?という議論はあるかもしれませんが基本的には家族葬というジャンルになるんだろうと考えます。とはいえ、さぞかし大規模になるであろうし、小さなホールで10人で!ということにはならないでしょう。しかし大規模でも家族葬です。
結論 お葬式とは規模大小は関係なく、たとえ大規模な葬儀であっても家族の意思が尊重されたご葬儀であればどれも家族葬ともいえて、たとえ小規模な葬儀であっても参列者を選ばなければ一般葬と言える
政治家さんや天皇家のように数千人規模の葬儀までとはいわなくても、最近でも一般的なお葬式でも100人ぐらいの参列がある葬儀もよくありますが、一般葬儀社で行う数百人のお葬式も、ご家族の意思を尊重したお葬式であれば「家族葬」になりますよね。そういう意味で、もっと言えば厳しい今を生き抜いている葬儀社の中でご家族の意思を尊重しない葬儀社はまず存在しないと思いますので、そう考えたら実に合理的です。
今後は一般葬という言葉も死語になるであろうし、家族葬専門店という言葉も死語になることを意味します。これまでは近親者主体の規模が小さい葬儀が家族葬で、一般参列が出来る葬儀を一般葬と言ってましたが、規模では区別できないことが分かったので。
よって葬儀社も消費者が迷うような言動「うちは家族葬専門なんですよ」とか「うちは家族葬と違ってきちんとした一般葬が出来ます」とか言わずに、「ご本人、そしてご家族のご意向に寄り添ったお葬式をきちんとします!」のひとことでいいような気もしますが。だって家族葬でも香典をやりとりする場合もよくありますし、一般葬でもお香典辞退をする喪家さんもよくおられます。結局は毎回、そしてお付き合いの深さによって人それぞれ違うものであり当たり前です。
そう考えると、流行でも時代でも、なんでもそうですが一周したらもとに帰ったりしますよね。お葬式もそうなんだろうと思います。とりあえず今から数十年はお葬式のことを家族葬ということが増えそうです。